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大量の汚染物質を排出し光化学スモッグなどの大気汚染をもたらすという負のイメージをもたれていたディーゼル車。一方で、トルクが強く機敏な加速が可能であり、更に燃費が良く経済性に優れている点から、特に商用車で普及してきました。
排出ガス規制の強化が世界的に広がる中、自然環境とディーゼル車との共存実現のため開発された技術が「尿素SCRシステム」であり、今、市場で注目を集めている。サンエーの尿素水識別センサーは、その尿素水が適正であることを監視し、システムを正常に機能させる働きを担っています。

尿素SCRシステムの概要

尿素SCRシステムは、ディーゼルエンジン車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)がアンモニア(NH3)と化学反応することで無害な窒素(N2)と水(H2O)に還元されるという原理を応用した排出ガス浄化システムです。SCRはSelective Catalytic Reduction の略であり、日本語で「選択(的)触媒還元」を意味します。
尿素SCRシステムは2004年(平成16年)に開発され、これを導入した新型トラックが発売されました。これは当時世界一厳しいと言われた日本の平成17年排出ガス規制を見越しての発売となりました。以降、国外でも排出ガス規制の強化に伴い尿素SCRシステムは大型車のディーゼルエンジンに組み込まれてきました。
ディーゼルエンジンの排気浄化装置としては他に、DPF(Diesel Particulate Filter)システム等が用いられていましたが、DPF再生のために追加の燃料噴射を行うので、燃料消費量が増えたり軽油によるエンジンオイルの希釈が問題となっていました。現在ディーゼル重量車の排出ガス低減技術としては、この尿素SCRシステムが主流となり、大型車を中心に採用されています。

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尿素SCRシステムにおける尿素水識別センサーの役割

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サンエーの尿素水識別センサーは、尿素SCRシステム内の尿素水タンクへ取り付けられます。尿素SCRシステムが正常に機能し窒素酸化物を無害化するには噴射する尿素水が適切な濃度でなければならないため、尿素水識別センサーはタンク内の尿素水の濃度を監視しています。また、タンク内に誤って尿素水以外の物質が注入された場合に検知する機能、氷結や溶解を検出するための温度計測機能、タンク内が空でないかどうかを判定する機能を備えており、尿素SCRシステム内で重要な役割を担っています。

国内外の排出ガス規制

日本の排出ガス規制は1966年に始まり、年々強化されてきました。2005年にはガソリン車、ディーゼル車とも排出ガス試験法を見直し「新長期規制」を実施、その3年後には当時世界一厳しいレベルの排出ガス規制(ポスト新長期規制)を実施しました。さらに2010年には、ディーゼル特殊自動車に対し、排出基準の強化を実施し、自動車の排出ガス低減を図っています。
欧州では排出ガス規制EURO 1が1993年に導入されて以来、段階的に排出量規制値は引き下げられてきました。最新の規定であるEURO 6では許容されるディーゼル車の窒素酸化物(NOx)排出量を平均で0.13 g/kWhとしており、さらに2015年からは、EUで新たに販売される新車はすべて、このEURO 6の規制値をクリアしなくてはならないとしています。中国やインドなど新興国はこのユーロ圏の規制レベルに追従する動きが強くなっています。
一方、米国においては環境保護庁(EPA)によって連邦レベルで規制が施行されています。現行の規定であるEPA2010におけるディーゼル車の窒素酸化物(NOx)排出量の規制値は0.27g/kWhとなっており、さらに厳しい新基準が2017年施行の予定です。これらの厳しい規制をクリアするために、各国の自動車メーカーは尿素SCRシステム等の排出ガス浄化システムを搭載し、運用していく必要性に迫られています。

[参考サイト]

公益社団法人自動車技術会
https://www.jsae.or.jp/

国土交通省
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk10_000001.html

EPA(米国環境保護庁)
http://www.epa.gov/otaq/highway-diesel/regs/f00057.pdf

International Council on Clean Transportation
http://www.theicct.org/comparing-real-world-nox-euro-iv-v-vi-mar2015